今回は、エピソードの続きではなく、
「トラウマに起因する反応」と「人間の心理機能の原則」の絡み合いについて、
私の例を参考に整理したいと思います。
トラウマに起因する症状は、さまざまあります。
ここでは、広く浅いトラウマ反応に注目し、
そのトラウマ反応と人の心理原則との相互作用の一連の流れをイメージできたらいいなと思います。
目次
トラウマ反応と心理機能の原則
人の心理機能は、トラウマなどがあってもなくても誰にでも共通する原則を持っています。
その代表が、「双極性障害Ⅰ型」の記事などでしつこく繰り返している
「メンタルは上がったら下がる」という性質です。
もちろん個人差がありますが、これは病気ではない人でも同じです。
一方で、トラウマ反応である「過覚醒」や「記念日反応」などは、特異な反応です。
ただ、これらの特異な反応は、一般的な心理原則と作用し合っています。
回想:「夏」が記念日
私は、「ある性被害サバイバーの話⑤」で書いたように、中学時代の被害は「夏」でした。
そのため、毎年夏になると「過覚醒」になり、今思うと「軽躁状態」でした。
活動的になり「トラウマの傷を克服しないと!」という気持ちが強くなり、
「ある性被害サバイバーの話④」で書いてある「1回目の被害場所を探して回る」という行動も必ず夏にしていました。
また、ネット(当時はSNSがなかった)で、性被害者の方々と交流しようと試みたり、無料メールカウンセリングをやってみたり、
時にはチャットで知らない男性と話してみたり、中学時代の先生に連絡を取ろうとしたり…。
とにかく、トラウマのことばっかり考えていました。
でも、気持ちは「克服するんだ!」というやる気があるので、
毎年のことだったのに、「私は夏が好きなんだな」くらいにしか思っていないほど、
過活動になっていることに全く気付いていませんでした。
解説:記念日反応と夏
私の場合は、トラウマ反応である「記念日反応(アニバーサリーシンドローム)」と、
「夏」が重なっていたので、過覚醒と過活動が顕著になったのだと解釈しています。
記念日反応
「記念日反応」はご存知の方が多いかと思います。
「事件や事故、災害などが起きた時期の前後に、なんらかの心身の不調がでる」ことをいいます。
私の場合の「記念日反応」は、「過覚醒」だったのだと思います。
もともと酷い不眠で、「過覚醒」が症状の中で一番顕著だったので、記念日反応も同じだったのでしょう。
また、「過覚醒」のとき、いつもではないですが、同時に「過活動」になりがちだと思います。
これは「双極性障害」ですと顕著です。
PTSDであると、必ずしも「過覚醒だと活動も活発になる」とはいえないと思います。
そこは個人差や背景要因によるのだと思います。
「夏」という要因
そして、「夏」という季節は、一般的な反応として「活動的」になります。
「過活動」にまでなるかはそれぞれですが、
「冬季うつ」という言葉はあっても「夏季うつ」という言葉はないことも証明であるように思います。
(「冬季うつ」の記事はこちら)
精神疾患を持った人に限らず、
人間の一般的な反応として「夏は元気になる」傾向があります。(もちろん例外もあります)
私の場合は、もともと「過覚醒」が主症状であったこと、
「記念日反応」が「過覚醒」で出たこと、
「夏」で「活動的→過活動」になった、といえるかと思います。
トラウマがあると「過活動」が危険に
「過活動」という状態は、「双極性障害Ⅱ型」でも軽躁状態について説明していますが、
一般的には、「本人がやりたいことをやり過ぎる」という状態です。
しかし、トラウマが根底にありますと、「やりたいことをやる」のではなく、
「トラウマに関することに近づいていく」という傾向になりがちです。
これは時に「再演」になってしまうこともありますし、
さらに「過覚醒」になってしまい予後が心配です。
回想:秋の不安定
私が、「再演」という行動をしていたり、
「ある性被害サバイバーの話⑫」で出てくる「兄に耐えられなくなって家出」という勢いだけの大胆な行動を起こしていたのは、
「夏の終わりごろ」でした。
9月から10月あたりの「夏の終わり~秋口」は、毎年「不安定」になり、よく「行動化」していました。
よくわからない「不安定さ」に振り回され、
「胃炎になって水も吐いてしまい衰弱」してみたり「再演」を繰り返してしまったり、「家出」をしたり、
振り返ると、「極端な行動」はこの時期に集中していますね。
ただ、これら「秋口の行動化」は、夏の「過活動」による「トラウマの傷への近づき」が原因となっていると考えられます。
解説:軽躁状態からうつ状態へ移行期
秋口の「不安定さと行動化」は、
夏の「軽躁状態(過覚醒)」が「うつ状態」へ移行する時期だったのだろうと解釈できます。
「双極性障害」の記事で説明しているところの「混合状態」というイメージです。
夏の過活動によって疲れが出始めて、短い「軽躁状態」が終わりに向かって「うつ状態」になるまでの「移行期間」だったのでしょう。
回想:冬はうつ状態
私は長年、「冬が大の苦手」でした。「健康な状態」を知らないままだったので、それが「異常」なのかわかりませんでした。
「元気な夏はすごく短い。苦手な冬は長くて6ヶ月くらいもあるのか…」
と毎年冬が近づくとかなり憂鬱になっていました。
解説:メンタルは上がったら下がる
しつこくなりますが、「メンタルは上がったら下がる」のが基本原則です。
なので「双極性障害Ⅰ型」で強調していますが、「夏に上がったらその後下がって長い」が鉄則です。
当時は知らなかったので仕方ないですが、まさに心理原則そのものの過程を経ていました。
「元気な夏はすごく短い。苦手な冬は長くて6ヶ月くらいもあるのか…」という当時の感想は、
躁状態(夏)とうつ状態(冬)の説明そのものですね。
躁状態はとても短く、うつ状態は長いことが一般的な心理原則です。
ポイント
ただ、「躁」ではなく「普通に元気」であれば大丈夫です。
もちろん「上がったら下がる」という心理原則はありますが、
通常の範囲内であれば、下がり方は意識できないほど少ない程度に抑えられることも多いです。
見極めは、「うつっぽい時期と意欲的な時期がはっきりと存在するか」かと思います。
解説:「うつ」と「冬」
「記念日反応と夏」の重なりと同じで、「冬」という季節は、「冬季うつ病」があるように、
そもそも「うつ的になりやすい季節」です。
日照時間の短さや寒さが原因と指摘されています。
特に女性は冷えが堪えますのでしんどいことが多いかと。
私の場合、そこに「うつ転」が重なったので、「冬=うつ」に毎年苦しんだのだと考えられます。
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夏は軽躁状態または過覚醒になりやすく、
冬はうつ状態または低覚醒になりやすいので、
思い当たる方は、それは自然な反応であると思います。
そして「トラウマの傷を回復させたい」といつも以上に思ってそのような行動をとることも決して悪いことではないですし、
そういう勢いがあったから可能になることもあります。
ただ、もし私のように「再演」であったり「後にうつ状態を招く」ようなことがあったら、
気をつけられるといいかもしれないなと思って書きました!
今回は私の例を出したので「ある性被害サバイバーの話」になりましたが、
夏が来たら、一般の方向けの「夏のメンタル」的な記事を改めて書こうと思っています。
次回の「ある性被害サバイバーの話」は、
「過量服薬の影響について」まとめています!
週末には『不安障害』をアップしましたので、ご興味があればお読みいただけると嬉しいです。
最後までお読みくださってありがとうございましたm(__)m