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家族 心理豆知識

【家族療法】機能不全家庭の病理 ~病んだ人は「家族の病理を代表した人」~

2021年7月9日

 

今回は、「家族療法」という有名な心理療法が生み出したいくつかの概念を理解したいと思います。

 

ほとんどの心理療法は、「個人」を対象にして、その人の抱える「症状」の軽減に努めます。

しかし、「家族療法」は、対象を「個人」ではなく「家族というシステム」とします。

 

家族療法が興味深いのは、「家族というシステム」に着目したことで、

「異常なコミュニケーション」を概念化したことです。

 

後述する「ダブル・バインド(二重拘束)」は、

「人を病気にさせる異常なコミュニケーション」として精神病の発症原因として検討され、

その後、家族療法の枠を超えて広く一般に普及しました。

 

そこで、この記事では、「家族療法」の心理士の介入方法ではなく、その理論を整理したいと思います。

 

この記事は、「自分の家族は機能不全ではないのか?」「自分だけが精神疾患になったけど原因は家庭環境にあるのではないか」

というような思いを抱いている方の自己理解の助けになることを目的としています。

 

そのため、解決策ではなく、「家庭内で起きていたかもしれないこと」を家族療法の観点から整理しています。

 

表層的な内容ですが、

「健全な家庭」ではなく「機能不全」の家庭に注目しているので、あまり気持ちの良いものではないかもしれません。。

なので、具合が悪い方や、「今はネガティブな話を聞きたくない」という方は、読まずに飛ばしてくださいね。

 

また、機能不全的な要因はこの記事で述べられること以外にもたくさんあると思います。

今回は基本的で表層的な内容です。

なので、合わないことや腑に落ちないことがあったらお気持ちを否定されずに、

ご自身の理解の助けや整理に繋がる情報だけ大事にされていただければと思います。

 

家族療法とは

家族療法はさまざまな学派があり、技法も多岐に渡ります。

核となる理論は、

「家族のメンバーが相互に影響を与え合いながら機能しているシステム」として「家族」を捉えます。

 

家族療法では、「円環的因果律」という考え方をします。

「円環的因果律」とは、「母親のせいで子どもが非行に走った」というような「直線的因果律」で捉えるのではなく、

「家族メンバーは互いに影響しあっている」という相互関係として捉える見方です。

 

先ほどの例では、「母親のせいで非行に走った」ではなく、

母親には父親や祖父母も影響を及ぼしているでしょう。

そして、非行に走った子どもも、両親や祖父母と影響を与え合っているでしょう。

 

家族療法では、円のように互いに影響しあった結果として、

悪循環に陥っていたらそれを断ち切ることを目指します。

 

IPの存在

家族療法では家族全体の機能を治療対象とします。

そのため、家族の誰かに生じた問題は、その人だけの問題ではなく、

「家族を代表して問題を体現した人」と考えます。

 

そこで、家族療法では、不適応症状を表したメンバーを「Pt:Patient(患者)」ではく

IP:Identified Patient;(患者と見なされた人)」と呼びます。

 

個人の不適応状態は家族の「機能不全」と捉えます。

 

家族に「機能不全」がおきていると、

「最も感受性が強いものが病気になる」という捉え方をします。

 

家族ホメオスタシス

生物学で、状態を一定に保とうとする恒常性のことを「ホメオスタシス」と言いますが、

心理学では「変化を止めようとする働き」を意味します。

 

家族療法では、家族機能にも今までの状態を維持しようとする「家族ホメオスタシス」作用が働くとしています。

 

よって、「症状を呈している家族メンバーは、その病気が家族のバランスを保つ機能を持っている」と解釈します。

 

これは、IPが示している病気が回復すると、別の家族メンバーに心身症などの不適応状態が示されるという現象が認められたためです。

家族は機能不全であっても、もとの状態に戻そうとする「家族ホメオスタシス」が存在することが示唆されています。

 

同様に、IPが入院して回復し、退院して家に戻ると悪化するという現象も「家族ホメオスタシス」で理解できます。

一説に、「娘の摂食障害が改善してくると母親の調子が悪くなる」という現象が起きるといわれていますが、その原理もこれで説明されることがあります。

 

機能不全家庭で起きていること

ここで、家族の病理を解くために役に立つ代表的な概念を整理します。

 

家族療法は、歴史をさかのぼると、統合失調症の患者さんを研究することに端を発します。

統合失調症を発症し、入院し、回復した統合失調症の方が、

家庭に戻ると悪化するというケースが多々認められたのです。

そこから、「家族」に関する研究が進みました。

 

高EE

精神疾患の発症に関しては、さまざまな見解がありますが、その中で、

高EEの振る舞いをする人が家族内にいると家族メンバーが精神疾患にかかりやすい」と指摘されています。

 

高EE

高EEとはExpressed Emotionといって、怒りや暴言など、激しい感情表出を意味します。

「ヒステリックに怒鳴る」などが代表例になります。

高EEは、「お前はなんてバカなんだ!」等の相手への罵りはもちろんのこと、

「私なんていない方がいいのね!」といったような同情を誘うようなものも含まれます。

 

家族境界

「家族境界」とは、家族をシステムと捉えたときの「世代間の境界」を意味します。

「祖父母システム」「夫婦システム」「子どもシステム」といったように、

健全であればそれぞれのシステムごとに適切な境界をもって機能します。

 

「親は親らしく」「子どもは子どもらしく」振舞うことができれば安定した家族になります。

 

けれどそれぞれのシステムの境界が崩れていたり

どこかのシステム間の境界が強固過ぎたり希薄過ぎたり、

誰かの不安で一気に境界が崩れるなどが起きていると、

「機能不全」な状態であり、それが個人の不適応に繋がっていると捉えます。

 

母親が子どもを巻き込んで祖母に対抗したり、

父親が父親として機能しないために息子がその役目を担う(背負わされる)などを指します。

 

アダルトチルドレンは、いろいろなケースがありますが、

基本的にはこの「家族境界」が適切でなかったためと捉えられることが多いです。

 

特に「境界の侵入」はシステム全体を崩します。

 

「境界の侵入」の代表例に「夫婦間の問題に子どもを巻き込む」ということがあります。

 

例えば、夫に対して不満があるのにそれを夫との2者関係で解決しようとせず、

子どもに対して「あんた、お父さんに似て、だらしなくてダメな子だね」などと当てこすりや八つ当たりをします。

このように、本来は世代ごとに解決すべき問題を、他の世代を巻き込んで、境界がなくなってしまう対応は、子どもに混乱を生じさせます。

 

バウンダリー

最近は「バウンダリー」という言葉が広がっているかと思います。

「バウンダリー」とは「境界」の意味で、

「過干渉な親」「目下・目上意識によるパワハラ・いじめ」などの原因として語られる機会が増えています。

 

健全なシステム論で考えると、親と子は別のシステム体になります。

しかし、親が過剰に子どもの行動に介入したり「親子」という上下関係が「逆転」してしまっていると、

そこには「適切な境界」は存在していないことになります。

それが家族の「機能不全」となります。

 

ダブルバインド(二重拘束)

始めに触れましたが「ダブルバインド(二重拘束)」は、「異常なコミュニケーション」として

現在は家族間に限らず、会社や学校などでのコミュニケーション上でも広まっています。

 

ダブルバインドとは、矛盾する2つのメッセージを同時に発信し、

相手を混乱させ、さらにどのように応えたらいいか分からない状態になっている相手を非難するという、

まさに「病的な」コミュニケーションです。

 

これは、言葉と態度で逆のメッセージを発します

 

例えば、「あなたこれ食べる?」と言葉では勧めながら、態度では「食べさせるものか」という拒絶の態度を示します。

そうすると相手は困りますよね。

そして結局、食べたら「意地汚い」等と罵られ、食べなければ「せっかく勧めたのに」と非難される。。迷っていれば「さっさとしなさい」と怒られる・・・。

つまり、何をどう行動しても批判されてしまうのです。

 

母親が「私の味方をしなさい」と暗に態度で示し、そうすると父親に批判される。

母親の味方をしなければ母親から批判的態度をとられる、というパターンもダブルバインドです。

 

この手法は「あなたが自分で選んだんでしょ」という方向に持っていく会話にも同じ要素が含まれています。

「親が選んで欲しい方を子どもに選ばせる」ように仕向けておいて、言葉では「あなたの好きにしていい」と言う。

 

注意ポイント

ダブルバインドの特徴

・どう応えても向こうが勝つ

・子どもが「自分で」選んだように仕向ける

・親の意向を「自分の希望」として表明させる

 

そのため、「自分の答え方が悪いのだ」ということではないのです。

 

子どもの頃から「ダブルバインド」を頻繁にされると子どもは非常に混乱し、

自己否定が強くなり、常に大人の機嫌をうかがい、言葉の裏読みをするようになります。

 

そして「ダブルバインド」は、大人社会でもよく見受けられます。

パワハラ上司などはよく使用しています。

そして教師も生徒に使っています。

 

「ダブルバインド」は、無自覚だろうと意図的だろうと、許しがたい意地の悪い行為です。

 

ダブルバインドについて斎藤先生がすごく分かりやすくまとめてくださっています。

 

スケープゴート(いけにえ)

夫婦間の確執や、家族間で自分がターゲットになることを避けるため、

例えば母親が、子どもを暗にそそのかし、「問題児」「病弱」等の役割を子どもに課すことで

母親自身は自分の心の問題を回避します

 

「親自身の心的課題からの逃避」は、いわゆる「毒親」に非常によく認められます。

自分の心と向き合うことから逃げ、しかしストレスはそのままですから、それを子どもに暗に転嫁してしまう…

親側の心はいつまでも混沌としたままですから、解決することはなく、家庭は不健全になってしまいます。

 

モア・オブ・ザ・セイム

モア・オブ・ザ・セイムとは、

「同じことを何度も繰り返してどんどん問題をこじらせていく」ことを意味します。

 

例えば、仕事をすぐ辞めてしまう息子に対して、父親は毎回激怒し「縁を切る」を繰り返す。

このパターンを見直すことなく、同じことを繰り返し続ける状態を指します。

 

また、子どもが「嫌だ」と表明したにも関わらず、何度も嫌がる行為を続けます。

その行為そのものに問題意識を持てません。結果として、状況は悪くなるだけになります。

 

システム論

家族療法にはさまざまな学派や考え方があります。

 

この記事では、自己理解に繋げる為にいくつかの概念をご紹介しました。

 

ただ、現在のポピュラーな介入方法は、家族を肯定し、犯人探しや原因追及をするのではなく、

未来に向けて、家族が持っている問題解決能力を引き出そうとするように支援します。

 

家族などの集団を「1つのシステム」と捉える考え方を「システム論」といいます。

家族間でいろいろな問題が生じている場合を「問題維持システム」といいます。

「問題維持システム」を「問題解決システム」に変化させていこうとするのが現在の一般的な方向性です。

 

そして、これは家族だけでなく「企業」や「学校」にも当てはめることができます。

 

学校でいじめが起きたら、「いじめられた子」「いじめた子」という個人ではなく、

「クラス単位」あるいは「学校全体の組織体制」に「機能不全の病理」があると捉えて、「集団」にアプローチします。

「企業」でパワハラやセクハラが起きたとしたら、あるいは従業員が精神疾患になったら、

その個人でなく、組織全体の機能がどうであるのかを見ます。

 

そういう意味でも、家族療法が示唆するものは、とても重要で意義深いものであると思います。

 

「家族」は治療に来なくても

家族療法の一番の弱点は、「家族が治療に来ない」ということだと思います。

 

私の臨床経験の話になりますが、患者さんの状態の説明をご家族に行ったり、

ご本人の希望で親に同席してもらったりすることなどはたくさんあります。

 

けれど、「家族療法が必要な親ほど来ない」です。

あるいは、来たからといって「アリバイ的にただ来てるだけ」ということが悲しいことに少なくありません。

 

これが現実なんだろうと思います。

 

ただし、家族療法では「必ずしも家族が揃う必要はない」「個人カウンセリングの併用も必要」としています。

 

そして、親は来なくても、「IP」として苦しい状態を担うことになってしまったご本人に、

家族療法の概念を説明することは意味があることだと思います。

 

 

カウンセリングが進むと、患者さんの方から「親を連れてきていいですか」「先生から説明してほしい」と言い出されることがよくあります。

どんな気持ちで言っているか、そう心理士に頼むまでにどれだけ自身で親にわかってもらおうと努力してきたか、

病院に親に来てもらう事にどんな期待を抱いているか、それがどれほどささやかな願いであることか、

考えるほど苦しくなりますね…。

 

大人になった今だからこそ

「親を呼びたい」とおっしゃる方々は30代40代以上のことが多く、決して「子ども」ではありません。

それくらい親の影響はいくつになっても大きいということだと本当に痛感します。。

 

見方を変えれば「30過ぎてからようやくこれまでの異常さを回復させられる」とも捉えることができます。

 

親は分かってくれないかもしれません。

どんなに説明しても。

病院に一応は来て、医師や心理士から説明を受けたとしても。

 

そもそも病院に来てもらうことすら諦めているケースもたくさんありますよね。

 

ただ、「親に分かって欲しい」と思い続けることは何もおかしいことではありません

同様に、「親はもうどうでもいい」という思いも、当然ながら何もおかしいことではありません

 

どのような状況でも

とても大事だなと思うことは

「精神疾患になった自分が弱い」「他の家族は普通に過ごしているんだから自分が弱い」ということではない

という家族療法の教えです。

 

そして、機能不全な家庭は往々にして病んだ人を理解しません

それが追い討ちになり、なおさら「自分が悪いんだ」「自分が弱いんだ」と思ってしまいます。

 

しかし、そのような苦しい人を追い詰めることしかしないことこそが「機能不全」であり、

それを、まっとうだからこそ「異常」と感知して病気として体現したのだと家族療法は伝えています。

 

家族の病理を背負えるほど、強く感受性が豊かで優しい証であるといえると思います。

 

だからこそ、家族から離れた方がいいことがあります。

 

自分が抜けたら、また違う流れになります。

そして他の家族メンバーがどうなるかは、その集団の責任です。

罪悪感は洗脳です。

罪悪感に従わずに安全なところへ逃げましょう。。

もし既に離れていたら、離れられた自分をものすごく褒めて欲しいと思います。

 

でも離れるだけが選択ではありませんし、さまざまな事情で生活を共にすることももちろんありますよね。

「逃げればいい」とはいかないことはたくさんありますよね。

それは決して責められるようなことではありません。

 

もし今、機能不全のご家庭にいたら、むしろ一番ご自分を労わって褒め続けて欲しいです。

苦しい環境で、すごくしんどい状態で、よく頑張っている、決して弱いから病気なわけではないと、

自分をずっと労い続けて欲しいと思います。

 

 

家族がもたらす影響は甚大です。

今回の「家族療法」の概念を理解しても、感情的な部分や病気そのものは苦しいままかもしれません。

あるいはかえって、怒りなどの負の感情が強まってしまうこともあると思います。

また、これだけで説明できるほど家族病理は単純ではないですよね。。。

 

ただ、それでも、「病気になった自分が悪かったわけでもおかしかったわけでもない」ということは、

しっかり理解していきたいと思っています。

 

そして、病気はもちろんのこと、家族に基づく思考や感情は、癒すのに時間がかかります

どうか「いつまで引きずってるんだ」等と自分を責めることなく、

今までの年月を労わりながら歩いていければと思います。

 

 

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今回は「家族療法」が生み出した概念をいくつかご紹介しました。

 

家族療法の理論や他の心理学の知識が、ご自身を理解し、癒していける材料となりますことを願っています。

 

これからも自己理解や他者理解に繋がる心理豆知識を記事にしていきたいと思っています。

 

今日も最後までお読みくださって本当にありがとうございましたm(__)m

 

 

 

 

 

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