今回は、「成功恐怖」という「幸せを避けてしまう心理」を深堀りしたいと思います。
「成功恐怖」とは、
「自分が成功したら周りから妬まれたりして返って不幸になるのではないか」と思い、
自ら成功を避けてしまう心理です。
「成功恐怖」という概念が提唱されたとき、
「女性に多い」とされましたが、それは女性であると「周囲との協調を求められる」「女性の成功を世の中が喜ばない」等といった時代背景があったからと指摘されています。
この「成功恐怖」は、単独で語ると話が広がらないのですが(上記の説明で終わってしまう)、
現実場面では、いろいろな心理と絡み合って、生育歴が大きく影響する心理であると私は捉えています。
そこで今回は、「幸せになることが怖い」あるいは「自分が幸せになれるわけがない」という「成功恐怖」という心理について、
「成功恐怖」の概念の枠を寝子が勝手に超えて理解していきたいと思います。
この記事での「成功恐怖」は「良い状態への変化に対する抵抗」という意味で用いたいと思います。
目次
「成功恐怖」かどうかの見極め
「成功恐怖」といっても、一般的な「不安感」「モヤモヤ感」と感じ方は同じです。
なので、自分が感じている不穏な感覚が何であるのか見極める必要がありますよね。
有名な例をあげますと、
「マリッジ・ブルー」をご存知の方は多いと思います。
これは、成功恐怖の1つだと捉えることができます。
ただし、「本当に相手に違和感を抱えて迷っている」ということもありますよね。
これは、結婚や転職などに関わらず、病気の回復過程でも生じます。
「このまま進んでいいのだろうか…」というとき。
これが「成功恐怖」なのか「踏みとどまったほうがいい変化」なのか、判断は難しいと思います。
見極め方はただ1つ、自分が感じているモヤモヤが何か、自分で見つけてあげるしかありません。
マリッジ・ブルーを例にあげると、自分の気持ちに耳を澄ました結果、
結婚相手への違和感を隠そうとしていたモヤモヤだったのか、
「相手のことは好きだし何も違和感はないけれど、このままうまくいくはずがないと思ってしまう。結婚して幸せになれるはずがない」という自分の問題なのか。
後者であれば「成功恐怖」といえるかと思います。
この記事では、あくまでも「成功恐怖」といえる不安感について取り上げます。
「成功恐怖」による行動
「成功恐怖」が強いと、誰かとの関係がうまくいきそうになったり、自分の状態が今までとは違う方向へ進みだすと、
自ら避けて縁を切ってしまったり、良いことがあると不幸なことが起きると思ってしまって自然と良い環境を避けたり、
あるいは、劣悪な環境に居続けてしまったりします。
場合によっては自らに罰を与えるような行為をして安心を得るなど、まさに幸せを妨害してしまいます。
「成功」を恐れる原因
うまくいくことを恐れる原因は1つではないと思います。
もともとの「成功恐怖」の概念では「周りの人に妬まれるのではないか」といった「周囲との軋轢を恐れる」ことが主たる原因となっていますが、
実際は「他人からどう見られるか」ということよりも、
自分自身が自分の成功を否定していたり、未経験の世界のため不安が強く進むことができなくなったり、
そもそも自分が幸せになることを認めない等といった自己の内面の問題であることが多いと考えています。
具体的にはどのような心理が「成功恐怖」を生じさせているのか、1つ1つ見ていきます。
自分の存在を否定された経験
自分の存在を否定されるような環境で育つと、当然ながら「自分は幸せになるべき存在なのだ」とは思えません。
人から評価されても疑ってしまいますし、光が当たるような機会があると、「自分にはふさわしくない」と逃げたくなることも稀ではありません。
いろいろなストレスや不自由さがあっても「この程度がふさわしい」と自分で自分の限界を設定していることで、
それ以上のことを望まないという心理が成功を妨げていることがあります。
これは人の心理原則の1つ「認知的不協和」も関連しています。
「自分に対する既存の認識に合う事柄は受け入れ、そうでないものを否定する」という心理です。
「認知的不協和」については「偏見」の説明でこちらの記事で解説しています。
「幸福」の体験がない(未知の経験への恐怖)
「再演」の記事でも書いていますが、
人はたとえ不当な扱いであったとしてもその経験の方が多ければ「慣れ」が生じ、
「慣れている方が不安じゃない」という状態になります。
恐怖や不安を常に感じていることが日常であったら、
そうではない安全な環境に置かれると、恐怖や不安が無いことへの「不安」が生じます。
そのため、その人にとってより適切な環境や状態が目の前にあったとしても、
慣れていないために不安が強くなり、慣れているところへ戻ってしまうことがあります。
これも「成功恐怖」の1つだといえます。
「嬉しいこと」に水を差されて傷ついた経験
「嬉しいこと」に否定的な態度を幼少期にされてしまうと、とても傷つきます。
これは「喜んだ自分が恥ずかしい」という「羞恥心」を伴うため、より深く心に刻まれ「二度と恥ずかしいことをしないように」と気をつけるようになります。
そして、「恥ずかしいこと=隠すべきこと」となるので、自分が嬉しいと感じたことを自分にも他人にも隠すようになるために、
癒されにくく、そして幸せを感じないようになってしまいます。
これは、「自分が幸せになることを願うこと自体さもしいことだ」というような恥の意識に繋がることもあります。
「自分なんてそんな望みをもってはいけない」というような。
とても苦しい「呪い」ですよね…。
親やいじめを行う人間は、こういう「嘲笑」をします。
やられたほうは、怒られたり殴られたりするよりインパクトが弱いため気づきにくいですが、
人のポジティブな感情や必死の訴えをバカにするような行為は、ひどく傷つくもので、許しがたい行為です。
本当は恥ずかしいことなどでは全くありません。
嬉しいと思ったことや、逆に必死で感情的に訴えたことは尊いことで、
バカにされるようなことでは決してないと何度でも繰り返したいほどです。
このような「呪い」によって、最初から自分なりの成功ということを望まなくなることがあります。
「もう傷つきたくない」ために「期待しない」「望まない」
また、「さらに傷つくことが怖い」という、新たな傷つきへの恐怖が強いことも多いと思います。
健康な人であれば、「挑戦してダメだった」というとき、
多少のダメージはあっても「失敗したけど学んだこともある」というくらいにポジティブを維持できる人も多いです。
けれど、傷だらけの人だったら、健康な人にとっては「新たな学び」という傷にすらならないことでも、致命傷になりえてしまいます。
「成功」というと大げさになってしまいますが、
「小さな幸せ」であっても、期待すること望むことは、叶わなかったときに傷つきます。
さらに、希望を持つこと自体、それなりに元気さが必要になるので、心底疲れていると希望など持てなくなります。
なので、「自分のために今以上を望む」ということができないとしても、当然の反応である場合があります。
「トラウマ」を認めることになるという抵抗
これは「トラウマ体験」が明らかである場合になりますが、
性被害などの極めて理不尽な犯罪の被害にあった場合、
「自分が幸せになる、あるいは病気が治ることは、その程度の傷だったのだと誤解されてしまう」という気持ちや、
自分自身の中で「良くなることは被害を認めること」というような複雑な心境を生むことがあります。
そのため、自分がより良い状態になっていくことに抵抗を感じることがあります。
「成功恐怖」を感じたら
ここまで「成功恐怖」の概念を超えて、「より良い状態へ進めない要因」について理解を深めてきました。
もちろん、必ずしも「新しい状態」へ進まなくてもいいのです。
大事なことは、無意識に気付き、選択できることだと思っています。
以下は、「成功恐怖」が起きるときはどんなときか、どうすれば良いのかについて整理をしていきたいと思います。
「成功恐怖」が強くなるときとは?
「成功恐怖」は、本当に不幸な状況では起きません。
「成功」を全く意識できない状況では起きません。
「成功」が意識できるからこそ起きる「恐怖」といえます。
ということは、自分の「成功恐怖」に気付き、その不安が強くなっていたとしたら、「今、幸せ」なのかもしれません。
あるいは、「自分が望んでいる幸せが目の前まできている」という証かもしれません。
「成功恐怖」というのは不安ですし、葛藤も生じますので苦しいです。
でも、わかりやすくするために極端な例をあげますが、
「大きくなったらスーパーマンになるんだ!」という夢を持てるくらいの年齢であると「成功恐怖」という心理にはなれません。
つまり、「自分は何者にでもなれる」という状態は、それはそれで現実的ではなく厄介です。
大学生の「モラトリアム」と言われる時期は、明確な目標がないと成功恐怖どころか、
自分がどこを目指せばいいかわからなくて、「ただの不安」でいっぱいです。
なので、捉え方を変えてみると
「成功恐怖が強くなっているということは、そこまで自我を育ててがんばって進んできた証で、最後の課題に来たのかもしれない」
ということもあるのです。
成功恐怖への対処
成功恐怖は「未経験」で「慣れないこと」であり、「今の状態が変化する」ときに抱く心理です。
ということは、「経験」し「慣れる」ことが、成功恐怖の払拭には必要になります。
流れに任せる
「慣れない」「未経験」であることが不安や恐怖の一因だとすると、経験を重ね慣れていくことが必要になります。
「慣れる」というのは理屈ではなく感覚的なもので、時間が必要です。
このような場合、私の一番のお勧めの対処法は、
流れに任せる
です。自分では特に動かない。何もしない。変えない。ただ時間の流れに任せる。
「慣れる」
今まで書いているように「慣れ」というのはあなどれない要因です。
なので、「幸せな状態」の体験がなければ、恐ろしくて不安で当然です。
そのため、その恐ろしさや不安を軽くしようとしてしまうと、
どうしても「成功恐怖」にコントロールされ「将来の幸せの妨害」をしてしまう可能性が高いです。
かといって、自分から「幸せをつかみにいこう!」と思っても、無理していることと、どうすればいいかわかりません。
ならば、流れに任せてみてもいいのではないでしょうか。
自分の人生、自分だけで成り立っているわけじゃないし、自分でコントロールできるわけでもないことは、精神疾患のご経験があれば体験されているかと思います。
そう!自分の人生、よくわからないけど動いている。
そしてそれは決して、ネガティブな方向のみに動くものではないと思っています。
ポジティブな方向にも動くものです。
だから、肩の力を抜いて、「自分の不安は成功恐怖かもしれないな」と気付いてあげたら充分。
あとは、その不安に構いすぎず、でも不安をなくそうとせず、ただ日常生活を送っていましょう。
そのうち、慣れたり変化したり出会ったり離れたり、変わっていくと思います。
その先が、自分にとっての幸せであって欲しいと思います。
不安への直接的な対処
ただ、そうはいっても苦しいものですよね。
そんなときは「不安に対する対処法」が「成功恐怖」への対処にも有効です。
こちらの記事で書いてある対処法を使ってうまく時間を稼ぎ、新しい状態に慣れていければと思います。
また、単純に「人に話を聞いてもらう」ことはどんな場合もとても良い対処法だと思います。
自分の不安感が自分から沸いているものなのか、特定の対象に抱いている違和感なのか、
自分だけで考えているとどうしてもグルグルしてしまいます。
なので、安心できる場で信頼できる人に話をしながら整理することは、単純ですが最も有効な方法だと思います。
↓押してくださると寝子が流れに任せながらも不安を具体化できます!!
いつも手間をかけて押してくださって本当にありがとうございます!!
みなさまの一押しを当たり前に思うことなく、1ぽち1ぽちに「嬉しいです!!」と叫んでいます!
「成功恐怖」は、シンプルに「自信のなさ」であることも少なくありません。
「回復したからって働けるのか」「新しい仕事をちゃんとできるのだろうか」など。。
先に述べたように「とにかく“成功”という状態へ進みましょう」ということではありません。
ただ、自分しか自分を理解してあげられませんので、
1つでも多く、自分に存在している気持ちを拾ってあげられたらいいなと思っています。
えっと、冒頭に「成功恐怖の概念の枠を寝子が勝手に超えて」と書いたように、
厳密な「成功恐怖」は、この記事の冒頭の3行程度になるかと思います。
それをここまで広げた!笑
心理学って奥が深い!!
今回の「成功恐怖」を起こす心理のベースとなっていることがある
「認知的不協和」という心理作用の記事もありますので、
ご興味があれば「認知的不協和」の記事もお読みいただければと思います。
ということで、今後も精神疾患や心理学に関することを書いていきたいと思います。
最後までお読みくださってありがとうございました!
またのお越しをお待ちしております♪