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病気のお話

【不安障害②】「不安」との上手な付き合い方 ~対処法編~

2021年6月6日

 

前回の【不安障害:理解編】で、不安障害を概説しました。

今回の記事では、森田療法の不安に対する捉え方と対処法

および「不安」に有効な一般的な対処法をご紹介したいと思います。

 

『森田療法』の具体的な対処法は、行動していくという点は認知行動療法と同じです。

ただ、認知行動療法が「不安を喚起する場所へ出向いて慣れていく」という行動内容に対し、

森田療法は、「やりたいことを不安があってもやっていく」という行動内容になります。

 

この違いは、対処に至るまでの理論が異なるからです。

認知行動療法というのは基本的に「学習理論」をベースにしているため、不安も「過去の学習」として捉えます。

一方、森田療法では、「不安神経症」として不安に特化した概念と対処法を提唱しています。

 

今回、認知行動療法ではなく森田療法的アプローチをご紹介するのは、

「慢性的な不安感」をいつも抱えている方々に有効であるからです。

認知行動療法ですと、ある程度ターゲットを絞る必要があります。

加えて「不安を喚起させる事柄へ直接挑んでいく」という行動は、

有効な反面、大きな負担が伴います。

 

そのため、今回は、「何に不安を抱くのか」という焦点化をする必要もなく、

あるいは、「とにかく不安が常にある」という場合に使用でき、

「自分がやってみたいこと」という比較的負担の少ない方を選びました。

 

ただ、認知行動療法もとても有効ですので、ご興味がある方は、ぜひネットや本などで、

触れてみてください♪

 

それでは、森田療法的アプローチをご紹介した後に、一般的に有効な不安に対する対処法もまとめます。

 

森田療法とは

多くの心理療法の起源が外国であるのに対し、森田療法は、日本で生まれ発展した心理療法です。

最近では特に認知行動療法との類似点が指摘され、森田療法の有効性が改めて評価されています。

 

森田療法の理論を分かりやすく端的に表現すると

「自分の不調を気にしすぎない。やりたいことをやりなさい」ということになります。

 

こういうと「気の持ちよう」みたいになってしまいますが、症状を軽んじているわけでは決してありません。

けれど、症状よりも「生きるエネルギー」をとても大事に考え、それを最大限発揮させようとするところが、森田療法の中核になります。

つまり、「病」ではなく「欲望」に光を当てようとします。

 

神経症のメカニズム

森田療法では、不安神経症のメカニズムを

「自分の心身の状態に関心が集中することによって、かえって不快症状を増幅させてしまう」と説きました。

 

例1)頭が痛い→なんで痛いんだろう→痛いな痛いな→あれ痛くない?→やっぱり痛い

例2)不安だ→不安をなくさなきゃ→ああ不安だ。早く不安をなくさないと→少しなくなった?いやまだ不安だ→ループ

この例のように、自分の不快な状態に注目しすぎてそのことで頭がいっぱいになってしまい、

無限ループのように症状を考え続けて悪化していっていると指摘しています。

 

この「不快症状に関心を向けることで不快症状が増幅されるという負のループ状態」を森田は『囚われ』と表現しています。

 

「あるがまま」を重視

そこで、『囚われ』の状態を打破することを治療内容とします。

「不安に注意を向ければ向けるほど悪化する」というメカニズムから、

森田先生は「あるがまま」という状態を維持することを提唱しました。

 

「あるがまま」とは、「不安などの不快な気持ちがあっても、そのままする」という『不問的態度』をいいます。

「どうして不安なんだろう?」「頭が痛いのは何か大きな病気なんじゃないか」等と、

不快さに関心を向けるのを止めましょうということを説いています。

 

「欲求よ、目覚めよう」

そして、「本来の欲望を目覚めさせ、やりたいことをやっていこう」という治療法として、

絶対臥褥期・軽作業期・重作業期・生活訓練期の4段階の入院治療を考案しました。

絶対臥褥期:入院始めの1週間。「ただ横になっているだけ」で、他の作業は一切禁止

軽作業期:2週間目。昼間に1回は外に出る等と軽作業のみ可。

重作業期:読書や大工仕事などのやや重い作業をする

生活訓練期:社会復帰に向けた訓練をする

 

現在の臨床現場では、入院ではなく通院によって森田療法を応用した形で用いることが多くなっています。

 

ポイントは、「本来やりたかったことを呼び起こすには『何もさせない』ことによって可能」というところです。

つまり、行動の自由やさまざまな選択肢があることが「本来の欲求」の妨げになっているという考えです。

 

日常場面に応用すると

入院して行動を制限されなくとも、日ごろから取り組める方法に落とし込みます。

まず、「不安はあるがまま」つまり「否定せず、でも注目しすぎない」ようにして、

「やりたいこと、やろうと思っていたこと」を、不安感があっても行動していくことが森田療法的アプローチとなります。

 

「やりたいこと」と言われると「長期的な展望のもの」と大げさに捉えがちですが、

些細な事柄でいいのです。不安のあるなしに関わらず

「ツイートしてみようかな」と思ったらしてみる。

「読みたい本があった」と思い出したら取り寄せてみる。

忘れてしまっているだけで、やりたいことって実はたくさん持っているのかもしれません。

 

この森田療法も含めて、以下、改めて「不安」という感情そのものに関することと、

一般的な不安に対する対処法をまとめます。

 

不安は「良い知らせ」であることも

前回の【不安障害:理解編】で少し触れましたが、不安障害は別として、

一般的な「不安感」が強くなるとき、それは必ずしも悪いこととは限りません。

不安は「○○したい」という意欲の裏返しともいわれます。

 

変化が起きるとき、今までの慣れた自分から変わることに対する不安であることがあります。

このメカニズムは、「再演」の記事で解説していますので、ご興味があればぜひ。

そのため、不安障害ではなく、「なんだかよくわからない不安が強くなっているな」というときは、

「変化の知らせ」あるいは「新たなチャレンジ」であるかもしれません。

 

カウンセリングでは、回復し始めると、これまでの状態が変化することに対する抵抗感や不安感が強まることがあります。

それまで「しんどい状態」であっても、ご本人には「慣れている状態」だからです。

仮に「苦しみが少ない良い状態」への変化であっても、未経験のことには不安感が強くなって当然です。

 

そういった意味で、「不安」とは、場合によってはポジティブなサインであることもあります。

 

この場合でも「構い過ぎない」ことが、新たな方向に進んでいくために重要になります。

 

「不安」との上手な付き合い方

どんな「不安」でも、共通する性質は、

①漠然としていればしているほど、②不安に構えば構うほど、膨らんでしまうということです。

「構えば構うほど」という点は、森田療法の「不快症状に注目すればするほど増幅してしまう」ということと同じです。

「不安障害」のような「慢性的に不安状態」であれば、森田療法そのままでもいいかもしれません。

 

ただ、「漠然としていればいるほど膨らんでしまう」という点への対処として

「注目すべき」場合もありますよね。

そこで、森田療法も含みつつ、それ以外の有効な対処法を整理します。

 

不安は具体的に

森田療法では『不問的態度』という「不安の原因を考えない。気にしないようにする」態度をとります。

これは「慢性的な不安感」には有効だと思います。

 

けれど、不安は「漠然としていればしているほど増幅する」という特徴を持っています。

そのため、漠然とした不安感からできるだけ具体化できると不安感がしぼんでいきます

 

なので、一度は「不安」の正体を検討してみる。

例えば、「なんだかイライラして不穏な気持ちだ」と感じて、

「あ、気圧のせいか」と正体を知れると、それだけで不快症状にはそれ以上構わずに済むことが多いかと思います。

また、気持ちや出来事などを書き出してみることが有効です。

 

ポイント

不安の原因を考えてみる

とにかく紙に気持ちを書き出す

 

紙に書き出したり人に話してみたり、アウトプットすることはそれだけでも「具体的にする」ことです。

見えない形のないものから、言葉に変えて具体化することはとても有効な対処法です。

 

不安には構いすぎない

いったん「不安の正体」を検討してみて思い浮かばなければ、それ以上構いすぎないようにしましょう

また、「不安の原因がわかったけれど、不安感がなくならない」場合も、それ以上、関心を向けないようにしましょう。

森田療法の「あるがまま」は、ここでも発揮されます。

 

不安を抱いたまま、関心はやりたいことに向ける。

 

やりたいことをやる

アイキャッチのねこのイラストにちなんで、森田療法的アプローチを表現すると

「不安で外出をためらうけれど、ラーメンを食べたいと思ったら食べに行こう!」ということです。

この例え、不安障害の人の苦しみがわかりますでしょうか?

比較的重いケースですと、

「ちょっとラーメン食べに行こうか」ということすら、不安感に襲われて自由にできないのです。

同様に「スーパーへの買い物」や「散歩」も不安感によって気軽にできません。

それでも、「○○したい」「△△が欲しい」という『欲』は、

人を健康に導いてくれるリソースであると森田療法は教えてくれています。

「~しなければいけない」「欲深いのは良くない」等の呪いにかけられていたら除霊していきたいなと思います!

 

簡単に取り組めそうな作業を備えておく

不安なとき、それでも「やりたいこと」ができたらベストです。

けれど、そうできないことが多いことも事実です。

 

そんな時のために、

「強めの不安に襲われそうになったら取り組む作業」をあらかじめリストアップしておく

と助けになることがあると思います。

 

繰り返しになりますが、漠然とした不安は「気持ちを向けると増幅する」ので、頭の中を他のことで埋めればいいのです。

ゲームでも料理や掃除でも、編み物でも、何か自分に合う軽作業を持ち

不安になったらそれをやっていると、気がついたら不安が去っていっていることが多くなるかと思います。

 

できれば、能動性を必要とする課題がいいです。

「動画やネットを見る」などですと、受動的で集中できずに不安が消えなかったり、

「本を読む」だと思考力が落ちている場合ですと頭に入ってこず、不安を忘れられないと思います。

 

なので、「気持ちを入れないとできないけれど簡単なこと」をすることを意識したいなと思います。

 

個人的に、「ゲーム」がまさに「簡単で集中できる」代表例だと思っています。

 

あと、「用事はなくても外へ出てみる」など、

「今いる場所から移動する」ことも気分が変化するため有効です。

 

もう1つは、「体の感覚に注意を向ける」ことです。

これは「パニック発作が起きそうだ」と察知したときにも有効です。

肩や足の腿などを軽く叩いてみましょう。

体の感覚を取り戻しましょう。

そうすることで、強い不安感から戻ってこれることがあります。

 

ポイント

不安に襲われたときの対処法

・簡単な作業を行う

・今居る場所から移動する

・体を叩くなどして身体感覚を取り戻す

 

強い不安が襲ってきたときは、他の事を考えられなくなるので、

あらかじめご自分に合った対処法をいくつかリストアップして、

すぐ見られるところに用意しておけるといいかと思います。

 

緊張や手の振るえの対処

「緊張して手が震える」等の場合には、「何かしながら」が不安や緊張を減らします。

例えば、「電話が緊張する」のであれば、「落書きしながら話す」、

「飴をなめながら」「手をグーパーしながら」等の「別の動作をしながら」行うと、

緊張や不安からの手の震えや声の震えなどを抑える効果があります。

 

 

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『不安障害』は2回に分けるほど、広く深い病だと考えています。

 

「不安」は、私たちの行動をコントロールするほど威力があります。

けれど、不安は意欲の裏返しであったり、

今までとは違う良い状態への変化の知らせであったり、

ネガティブなばかりではないのですよね。

 

自分に合った対策をし、やりたいことを不安がありながらも繰り返していけたら、

「不安があっても大丈夫」と思えるようになっていけるかと思います。

さらに、「やりたいこと」という自分が好きなことを体験していくことで、

自己肯定感の向上にも繋がります。

 

不安という感情そのものは全く悪くないです。

ただ、構い過ぎると怪物くんになるので、うまく手なずけて仲良くしたいものですね。

 

不安にまつわる『成功恐怖』という心理についてもご紹介しています!

ご興味があればこちらもぜひ!

 

「不安」は奥深いです。。

 

今回は2回に分けるほど長くなってしまいましたが、

最後までお読みくださって本当にありがとうござましたm(__)m

 

 

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