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病気のお話

【摂食障害】「拒食症」と「過食症」の理解と対応 ~水島広子先生から学ぶ~

 

今回は、『摂食障害』を取り上げます。

 

摂食障害に苦しむ方々はとても多いです。

そしてその背景はとても複雑で、ケースごとに異なります。

加えて「うつ病」や「不安障害」などを併発していることも珍しくありません。

 

一方、摂食障害には、「母親との関係が原因」「急激なダイエットが原因」等のさまざまな俗説があることも事実です。

そして、理論や治療法もさまざまあります。

 

しかし、水島先生は「摂食障害は母親の育て方が悪かったから」「摂食障害はわがままだから」などの俗説を明白に否定しています。

 

摂食障害の背景はケースごとに異なりますが、

この記事では水島広子先生の教えをベースとして摂食障害を理解していきたいと思います。

 

水島広子先生

水島広子先生は、精神科医で、「対人関係療法」の日本における第一人者である著名な先生です。

 

私が臨床で摂食障害の患者さんを多く担当することになった際に、

最も感銘を受け、現場でとても助けになった教えが水島広子先生でした。

 

最初に述べたように、摂食障害にはさまざまな背景要因と治療法があります。

ただ、ここでは水島広子先生の教えをベースに、私の経験を踏まえた内容になります。

 

他の要因や考え方を否定しているわけではないことをご理解いただけたらと思います。

 

以下、水島広子先生の著書「拒食症と過食症の正しい治し方と知識」や「対人関係療法」などを参考にまとめています。

 

摂食障害とは

摂食障害は「過食症」「拒食症」に大別されます。

両者を繰り返すケースもあります。

 

「過食症か拒食症か」の判断は、「痩せがあるかどうか」という点のみです。

「たくさん食べて吐く」というな代償行為は、どちらにも認められます。

 

過食症

「過食症状」とは、「だらだら食べ」ではなく、

抑えられない衝動と共に「始まりと終わりが明確に存在する」ことが特徴の1つです。

 

「痩せ」はなく、「過食症状」が認められる場合、「過食症」となります。

「過食症」は、嘔吐や下剤の使用といった「代償行為」が認められる場合と、

「代償行為」はなく「過食症状」のみがある場合と、両方を含みます

 

拒食症

「標準体重よりも有意に低い体重」であり、体重増加に強い恐怖心があり、

「過食症状が認められない」あるいは「過食症状が認められる」場合、「拒食症」となります。

 

「過食症」も「拒食症」も「痩せたい」という気持ちを持っています。

ただ、「過食症」の場合は目標とする体重が標準体重であることが多いのに対し、

「拒食症」は病的なほどの低体重にこだわる傾向があります。

 

摂食障害は病気

水島先生は「摂食障害は病気」ということを強調しています。

「過度なダイエット」や「本人の性格」ではなく、「病気」だと本人も家族も理解することが大事です。

「病気」は、本人は苦しい状態であり、症状はコントロールできないということを意味します。

 

そして、「病気」であるから「治る」ということを忘れずに大事にしていきます。

加えて「症状はストレスのサイン」として気づきに繋げることを説いています。

 

「自分はダメだ」と思うことは「百害あって一利なし」といいます。

摂食障害を抱える自分を責めてしまったら、「病気」だということを思い出しましょう。

 

「病気」という認識

精神疾患はどうしても「自分が悪い」「甘え」等の意識がつきまといます

摂食障害は、特に「我慢が足りない」であったり、「本人が好んで食べない」などという風に、

「病気」としての認識が持ちづらい病気だと思います。

また、拒食症はご本人の治療動機が低いケースも多々あり、回復の難しさを感じます。

だからこそ、「病気である」と理解する段階を丁寧に経ることが他の障害以上に大切になると思います。

 

なぜ摂食障害になるのか

摂食障害の原因は特定されていません。

もちろん、それぞれケースごとに原因や理由は異なります。

 

ただ、摂食障害に共通するのは「不安」です。

水島先生は「摂食障害は不安の病」としています。

 

さらに、拒食症と過食症それぞれの発症のきっかけとして、

とても興味深い1つの見解を水島先生は提唱してくださっています。

 

拒食症のきっかけ

「拒食症」は「体重を増やすことの恐怖」によって持続します。

拒食症の方は本当に数グラム単位でも体重が増えることを嫌います。

 

1日に1回以上は体重計に乗り、減っていると安心し、増えていると絶望的な気持ちになるほど、

体重に気持ちが左右されることが珍しくありません。

 

水島先生は、拒食症になる「発症のタイミング」について、

 

「拒食症は、それまでの生き方が通用しなくなることをきっかけに発症する」としています。

 

「これからどう生きていったらいいか遭難したような気持ちのとき」と表現されています。

 

例えば、「それまでは、がんばって良い成績を取れば、親に褒められ学校などにも適応できた。

しかし、中学生になり、成績が良いことでいじめられるようになった」というような例が典型的なケースです。

 

拒食症になる人は、基本的に真面目で努力家

人に相談せずに自分でがんばって結果を出そうとする傾向があります。

そのように生きてきたけれど、「良い子」では同級生に好かれなくなったり、進学校に入ったことで今までのようには成績が上がらなくなったなど、

これまでの生き方が通用しなくなることが拒食症の発症のきっかけになることが多いと指摘しています。

 

「がんばれば報われる」「いい子にしていれば好かれる」というようなそれまで信じてきた価値観が通用しなくなり、

せめて「コントロールできること」として「体重管理→拒食」という流れになり、

体重をコントロールできることで一時の安心を得ると分析しています。

 

しかし、これはだんだんと「恐怖」に変わります。

「不安」を解消するためだった体重管理が、「増えたらどうしよう」「体重に囚われすぎている」というように「縛られている感」になり苦しみになっていきます。

理屈ではなく「とにかく体重が増えるのが怖い」となり、拒食がエスカレートしてしまいます。

 

水島先生は「拒食症と強迫性障害」の関連も指摘しています。

(私のブログの「強迫性障害」の記事はこちら

 

拒食症の方も、強迫性障害の方のもつ性格傾向である真面目さや「こうしなければならない」といった意識が強く、

そのために、「儀式」を繰り返すことがあります。

そして「不安」が根底にあるために、

行為そのものを批判しても不安が募るだけで効果はないとされています。

 

拒食症はご本人に治そうとする気持ちがあまりないことが少なくありません。

なので「本人が好きでやっている」と、ご本人ですら思いがちです。

しかし、決して「気分のいい毎日」ではありません

むしろ、少しの体重増加に過度に怯え、ろくに食べられず、とてもつらい気持ちを背負っています

 

周囲ができること

水島先生の教えとは別になりますが、摂食障害に関して家族や周囲の人ができる有効な対処として「一緒に食べる場で美味しそうにたくさん食べると良い」といわれています。

本人に「食べろ」と促すのではなく、周囲の人がただシンプルに「美味しそうにたくさん食べる姿を見せる」。

本人には食については無理強いしない。

実は、拒食症の人に家族が「食べなさい」と強く言うのに、その家族自身は拒食とまでなっていないけれど食事制限をしていることがけっこうあります。

人に「食べろ」と言っておきながら自分は「太るから少なめに」等と意識しているために、

日々の家族の卓が「美味しい。楽しい」という場ではなくなっていることがけっこうあります。

 

過食症のきっかけ

過食は「モヤモヤとした負の感情から逃れたい」として行われることが多いです。

「過食によって、自分の感覚を麻痺させる」という表現の方が近いかもしれません。

 

この感覚はカウンセリングでも痛々しいほどに伝わってくることが多いです。

「とにかく自分を麻痺させるために」気持ち悪くなるほど食べる。。そしてそのことに自己嫌悪してしまう

 

けれど、拒食もそうですが、過食も、ご本人なりのその時できる精一杯のストレス対処なのですよね。。

 

過食のきっかけは「自分のことが嫌いになっていく過程で発症する」と水島先生は指摘しています。

 

これは私の臨床経験上も本当に痛感します。

ある種の自傷行為である場合もあります。

そして、「過食」をすることがその時できる精一杯の対処であったとしても、

「過食」をしたことに自己嫌悪を感じ、さらに自分を嫌いになっていってしまうことが珍しくありません。

 

「過食」は「自分を嫌いになっていく過程で発症する」と書きましたが、その代表例が「虐待」です。

虐待されて、自分を好きでいられるわけがありません。

 

そして、過食を行う理由となる「モヤモヤした気持ち」は、虐待されていればモヤモヤをちゃんと意識化することもできません。

まして言語化するなどできなくて当然です。そのため、過食を繰り返してしまう傾向にあります。

 

虐待だけでなく、両親が不仲だったり、きょうだいに両親がかかりっきりで甘えられなかったりした場合も同様です。

 

「過食」は「たくさん食べる」という労力を要します

さらに「嘔吐」などを伴うとさらにエネルギーを要する行動になります。

そのエネルギー原となるのが「気持ちの抑圧」であるといわれています。

 

外見はハキハキと人とコミュニケーションできるケースも多いです。

しかし過食をする人は「本心を人に言えない」ために気持ちを溜めてしまうと指摘されています。

その溜め込んだ気持ちを、食べ物と一緒に吐き出すように、過食のエネルギーになっていると推測されています。

 

対人関係療法

水島広子先生は、摂食障害の治療法として「対人関係療法」を提唱しています。

 

「摂食障害の人は自己主張が苦手で、肝心なことを言えない」ことによるストレスが摂食障害を起こしているという理由からです。

 

補足させていただきますと、「対人関係療法」は摂食障害だけに有効な治療法ではなく、

うつ病やパーソナリティ障害などにも有効だとされています。

何よりも、病気に限らずとも、日々を健康に生きる上でたくさんの示唆を与えてくれる療法であると私は感じています。

 

注意ポイント

対人関係療法は、実践的には特定の他者との関係性を吟味するなどたくさんあるのですが、

ここでは、自己理解に役立つと考えられる対人関係療法の概念の一部分をご紹介します。

対人関係療法の全てをご紹介できてはおりませんので、ご了承くださいませ。

 

自己主張が苦手

拒食症も過食症も「自分の気持ちを人にいえない」ことが大きな原因となっていると対人関係療法では伝えています。

 

拒食症は「真面目で一人でがんばろうとしがち」と書きましたが、

もしかしたらそれは「一人でがんばるしかない」と思うようになった何かがあったのかもしれません。

そして、その生き方ではうまくいかなくなったとき、誰かに相談できなかった

あるいはそんな自分を「ダメな人間だ」と思って、

本当は傷ついて悲しい気持ちになっていることを我慢して隠してしまったのかもしれません。

 

過食症は、「モヤモヤした負の感情を麻痺させるため」に行うとしたら、

まさに、「モヤモヤが何か」を意識できないくらいに自分の苦しみを言葉にする機会がなかったのでしょう。

さらに、「麻痺」させなければ耐えられないほどに、「自分が嫌」という気持ちが積もっているということですよね。

それらのモヤモヤは、どれほどに深くて巨大なのだろうと想像を絶します。。

 

感情の意味を知る

摂食障害の治療法では、認知行動療法も対人関係療法と並んで有効な治療法です。

しかし、治療目標が異なります。

認知行動療法の摂食障害に対するアプローチは、その食行動を起こす「考え方」と「行動」に着目し、是正しようと試みます。

 

対人関係療法では、認知行動療法の「どのような認知が感情を起こしたか」ではなく、

「誰が何を言って自分はどう感じ、どう対応したか」に着目します。

 

そして何より「感情」を大事にします

「感情」はどんなものも「悪いもの」はなく「意味がある」と捉え、

「感情が示している意味」を明確に知ることを大切にします。

 

拒食症の人も過食症の人も「感じるべきではない」と捉えている感情があり、ご本人は自分を責めていることが多いです。

そのため、まずは「感情に良いも悪いもなく、どんな感情も大事」ということを認めてあげることが第一歩としてとても重要になります。

 

例えば、拒食症の発症は「遭難したような気持ち」と水島先生は表現されていますが、それは「不安」ですよね。

「不安」は「安全ではない」という「意味」を知らせてくれていると考えます。

まず、「危険かも」と知らせてくれているということ。

そして「遭難したような気持ちならば、“今”の位置を知れればそれだけでも安心できる」と説いています。

 

過食症の場合も、自分が罪悪感や怒り、恥などを感じていることをしっかり見つめ

そういう感情になった過程を振り返ることで

「ああ、こういうやり取りがあって怒りを感じたのか。そういう状況に置かれていたんだ」と整理できると、それだけでも治療効果があります。

 

対人関係療法は特に「過食症」の「モヤモヤ」に有効だと思います。

その「モヤモヤ」は対人関係で生じていることが多いからです。

 

安全な場での対話

摂食障害において、対人関係療法や認知行動療法を行えなかったとしても、

「話をきいてもらう」ことだけでも治療効果があります

摂食障害に苦しむ方は自責感や自己否定感が強いため、理屈で「どんな感情も良い」と思ってもなかなか自分を許せません。

そのため、カウンセラーなど安心できる場で「そういう気持ちになるのは当然」と他者から認められることが感情の認知と表出を強化できることになります。

なので、普通の「対話によるカウンセリング」や「親友に相談」でも意味があると思います。

 

相手の気持ちを考え過ぎない

摂食障害の人は、思いやりがあることに加えて、

「育ってきた環境でのびのびと感情表現することが許されなかったことが多い」と水島先生は指摘していますし、私の臨床経験でも本当にそう思います。

 

なので、どうしても相手と自分との境界線があいまいで、自分のテリトリーを守れなくなっています。

「こんなこと言ったら相手が嫌な気持ちになるから黙っておこう」「相手の機嫌が悪いのは自分のせい」というような意識を持ちがちです。

 

「自分の気持ちを言うのはトラブルのもと」という考えになり、それは「自分のテリトリーに相手が入ってきたとしても黙って耐える」ということになってしまいます。

 

しかし、自分を守るためには「自己主張」することが必要で、

「相手の気持ちは相手のもの」という線引きを持つように意識します。

 

相手に気持ちを伝える

「自分の感情を話す分にはトラブルにならない」と「伝え方」を対人関係療法では大事にします。

「自分の気持ちを相手に伝えられるようにする」ことが重要なテーマになります。

 

摂食障害ですと、もともとが我慢しがちで他人の気持ちを考える傾向が強いので、

自己主張といっても「やり過ぎるのではないか」という心配はしなくていいと思います。

「“病気になるくらいなら言おう”という程度」と水島先生は表現されています。

 

健康になるために必要な自己表現をするというスキルを身につけようというのが「対人関係療法」です。

 

ただ、すぐにできなくて当然だとも水島先生は伝えています。

すぐに自分の気持ちを認めたり言ったりできなくても「ゆっくり焦らず」と繰り返しています。

 

食生活そのものは扱わない

対人関係療法の魅力の1つは「食生活そのものは扱わない」ということです。

ご本人が、自分の気持ちがどんなものであるか認識でき、かつ言葉にできることを繰り返していくことで、対人関係の持ち方が変わります。

そうすることで、症状は後から治っていきます

そして、その治療効果は何年も維持できるという結果が出ています。

 

ご家族へ

摂食障害を抱えている人は強い不安感が原因となっています。

そのため、不安を煽るような関わりは避けてあげて欲しいと思います。

 

「どうであっても一緒にいるよ」

「不安だよね。なにか協力できることがあれば言ってね」

等の安心できる関わりができるとベストだと思います。

 

水島先生は、本人が不安にならず、自分を嫌いになりもしないための家族の態度として

「“ずっと治らなくてもよい”くらいに思うこと」を勧めています。

ただ、ご家族も不安になることは当然だと思います。

なのでご家族もご自分の不安を話したり対処法を相談できる場として、

ご本人とともに医療機関を受診されたりカウンセリングの場に同席するなどして、

一緒に検討していけたらとても素晴らしいと思います。

 

水島先生からの学び

私が学生だった時代も、摂食障害について「母子関係が原因」という根強い教えがありました。

確かに、幼少期の家庭環境に原因があったり、まさに母親との確執があったりするケースはたくさんあります。

しかし「仮に生育歴に原因があっても母親だけがその環境を作っているわけではない」と水島先生は指摘しています。

 

私の臨床経験でも、最初から「母親との関係で摂食障害になった」と決め付けてかかっても、何も進みません。

さらに、本人の本当の苦しみを無視することに繋がります。

また、仮にそうであっても、本人はそのことは既に気付いていて、気付いていてもどうにもできないから苦しんでいることが多かったです。

 

そんなとき、水島広子先生の教えを学び、実践すると、驚くほど有効に作用し、

何よりも患者さんご自身がたくさんの気付きを得て、そのときの自分を癒すことができ、

ひいては摂食障害が改善されていくことを目の当たりにしていきました。

 

けれども決して「右肩上がり」ではありません。病気ですから、悪くなることもあります

症状が酷くなってしまうことがあっても自然な経過です。

 

もしご興味があれば、ぜひ、水島先生の書籍を読んでみるととても参考になるかと思います。

 

何よりもご自分のお気持ちを大切に

ものすごく推してしまいましたが笑、

そうはいっても、摂食障害は本当にケースによって背景も程度も大きく変わります

なので、この記事に当てはまらないことや、対人関係療法が合わないことももちろんあると思います。

そしてそれは決しておかしいことではないことは最後にお伝えしたいことです。

 

私の臨床経験でも、厳密には、対人関係療法だけではなく他のアプローチも併用しているケースがほとんどです。

そして、回復にはそれなりに長い期間かかることが通常です。

 

あともう一つ付け加えさせていただくと、「治療の優先順位」があると思います。

重度の拒食症は別ですが、「過食症」を主訴に来院された方が重いうつ病であったり、PTSDであったりすることがあります。

その場合、ご本人とよく話し合った上で、まず取り組む治療は摂食障害ではないこともあります。

いずれにしても、治療の場が、安心して信頼できる場であることが大事だと思います。

 

○○療法が合わなくても良くならないわけではありません。

それも大事な「感情」です。

どうか、ご自身の感覚やお気持ちを何よりも大事に、優先して欲しいなと思います。

 

 

 

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今回は摂食障害に関して「対人関係療法」の概念をご紹介しました。

 

最後までお読みくださって本当にありがとうございましたm(__)m

またのお越しを心待ちにしております!

 

 

 

 

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