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心理豆知識

セルフ・ネグレクト ~自分に手間をかけられない~

 

「セルフ・ネグレクト」という言葉が広がったのは、

1人暮らしの高齢者の「ゴミ屋敷」問題がマスコミで報道されるようになったことがきっかけだった記憶があります。

 

「セルフ・ネグレクト」とは、病名ではなく、状態を表す言葉です。

「自分に愛情をもてない」

「自分のケアをしようと思わなくなる」

という心理状態が伴っていることが多いです。

 

今回はその「セルフ・ネグレクト」について理解していきたいと思います。

 

「セルフ・ネグレクト」とは

「ネグレクト」とは、そもそも虐待の1つです。

児童虐待では「育児放棄」を示す言葉です。

「養育者が生育に必要な衣食住の面倒をみないこと。無視すること。」を意味します。

 

それを自分自身にしてしまう状態として「セルフ・ネグレクト」という言葉ができました。

 

言葉の由来は、高齢者の虐待研究から生じたようです。

 

「高齢者が一人の人として、生活において通常は当然行うべき行為を行わない、

あるいは行う能力がないことから、自己の心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ること」

 

という定義がなされることが多いです。

 

ご高齢の方がなりやすい原因には、

「筋力や体力の低下」や「病気の後遺症」といった身体的な衰え

「社会からの孤立」が関連していると指摘されています。

 

「セルフ・ネグレクト」は高齢者に限らず、

若い人でも陥ってしまう可能性のある状態です。

 

この記事では、

「自分に対して関心を持てず無気力な状態」として、

範囲を広げて考えていきたいと思います。

 

注意ポイント

「ゴミ屋敷問題」の中には、

強迫性障害の「溜め込み症」が原因であることがありますが、

ここでは強迫性障害には触れず、

「無気力」を原因とする場合を整理します。

 

自分を健康に保とうとする気持ちが持てない

セルフ・ネグレクトとは「自己放任」と訳され、

「自分に手をかけることができない状態」といえます。

 

「ゴミ屋敷」などの「衛生面」だけに限らず、

「調子が悪くても病院を受診しない

食事の栄養バランスを考えない

「翌日しんどくなることがわかっていながら夜更かしする」など、

自分を健康に保とうとする気持ちがなくなっている状態が「セルフ・ネグレクト」です。

 

身の回りの世話がおろそかに

「セルフ・ネグレクト」として行動面での代表的な特徴は

「自分の身の回りの世話をほとんどしなくなる」ということです。

ゴミ捨てや、入浴、洗濯や掃除など、

自分が快適に生活するためにしなくてはならない家事がおろそかになります。

 

食事に関しても、「作る」という手間をかけることが少なく、

出来合いの簡単な物で済ませることが常態化します。

 

また、生活リズムも崩れがちになる傾向があります。

生活リズムは「明日以降の生活を安定させるため」という目的の上で

「明日のために早く寝よう」等と行動に繋がります。

そのため、自分に関心がなくなってしまうと、なんとなく夜更かしをしてしまうようになり、

翌日がしんどくなってしまうなどの乱れが生じやすくなります。

 

これはうつ病の症状とも重なります

うつ状態になりますと、片付けや入浴などの身の回りのことがしんどくてできなくなります。

 

うつ病との類似点

「セルフ・ネグレクト」の状態は「うつ状態」にとてもよく似ていると思います。

ただ、うつ病よりもわかりにくく、仕事などの社会生活はなんとかできていることも多いため、

本人も気づかずに「自分がだらしないから」と思ってしまい慢性化してしまう傾向があるように思います。

 

「セルフ・ネグレクト」は診断名ではありませんので、厳密に「うつ病」と区別することはできませんし、

「セルフ・ネグレクト」の背景に「うつ病」などの精神疾患があった、というケースは少なくありません。

 

ただ、ここではよりイメージしやすくするために、私なりの解釈をご紹介します。

 

「うつ状態」と「セルフ・ネグレクト」は、かなり似た状態だと思いますが、違いを強いてあげると、

「セルフ・ネグレクト」のほうが「意欲低下」が目立ち、

うつ病のほうが「抑うつ(落ち込み)」が目立つというイメージです。

 

また、「セルフ・ネグレクト」は以前から行っている「娯楽」や「仕事」はできる傾向があり、

うつ病は「娯楽」でさえもできにくくなるという違いもあるように思います。

 

そのため、「セルフ・ネグレクト」であると、

ご自身でも他人からみても「ゲームはできるのに」「仕事は行っているのに」「趣味に出かけてはいけるのに」等と思われてしまい、

気づかれにくく、手当てが届かない事態になりがちであります。

 

なぜなるのか

そもそもの研究である「高齢者」の場合には、

「配偶者の死」などの「喪失体験」

「身体機能の低下」や、

なんらかの「精神疾患」が根本的な原因となっていると考えられています。

 

ただ、ここでは、高齢者というよりは、年齢に関わらず、

「自分に手をかけられない」という状態を取り上げたいと思います。

 

「セルフ・ネグレクト」になりやすい要因として、まず「一人暮らし」であることが指摘されています。

「一人暮らし」が危険因子の1つになるのは「他者に気づかれにくい」「孤立しやすい」という側面を持っているからです。

その意味では、家族と同居していたとしても、サポートがほとんど得られない状況であれば、

「セルフ・ネグレクト」になってしまう可能性は充分にあると考えられます。

 

「隠れセルフ・ネグレクト」といえる状態に、仕事は精力的に行っていて活動的で経済的にも余裕がありそうに見えるのに、

家に帰ったら部屋は汚く、食事もカロリーメイトなどで済せてしまうといったケースもあります。

 

「心」はもちろんですが、食事や睡眠や入浴などは、身体の健康にダイレクトに影響します。

そういった意味では、「身体への対処が特におろそかになる」という視点は1つの判断材料になるかもしれません。

 

心身の衰弱

「うつ状態と酷似」に繋がりますが、心身がダメージを受け、衰弱すれば、

家事などの身の回りのことができなくなります。

「オシャレをする」「ちょっと手間をかけた料理を作る」などは、元気になれることですが、

行う際にはエネルギーを要しますよね。

 

「自分がより元気にスッキリなれるために、ちょっとがんばる」ということさえできないほどに

衰弱してしまっている場合があります。

 

自分への愛情のなさ

自分に愛情を向けられると、

「自分が心地良くなるために、ちょっと手をかけてあげよう」と思うことができます。

その作業は「手間」というより「楽しみ」「喜び」であることも多いです。

 

「セルフ・ネグレクト」は、このような自分に対する愛情がほとんどない状態といえます。

 

先ほど触れた「ゲーム」などの簡単な娯楽ができる場合、

「遊ぶ元気がある」というより、内心に抱える苦しみを「ごまかしている」ことがあると思います。

 

これはご本人なりに日々を生きるために必要なことであり、

「遊ぶ元気はあるのに、やらなきゃいけないことはやらない」という積極性のあるものではないと思います。

 

そして、「自分に愛情がない」「自分に関心がない」ために、

「自分の状態は異常なのではないか」「具合がおかしいので病院に行こう」という考えに至らず、

「どうでもいい」「仕方がない」「もともとだらしなかったから」等と

ご自身の不調を無視してしまい、慢性化させてしまう傾向があります。

 

SOSのサイン

「うつ病」などの精神疾患を発症している場合でも、「気づく」ことは簡単ではないですよね。

ご本人も周囲の人も、なかなか気づかずに、気づいたときにはかなり悪化しているということが珍しくありません。

 

「セルフ・ネグレクト」は、もっと気づきにくいと言っても過言ではないと思います。

なぜなら、ご本人が「元気になることを放棄」してしまうほど、

「生きようとする活力がなくなってしまった」状態であるからです。

誰かに苦しさを訴えることもあまりないですし、

そもそも、「自分のメンタルは健康な状態ではない」という意識もないほど、

自分に関心がなくなってしまっていることもあります。

 

けれど、苦しい思いと過ごしにくい環境を抱えています

 

ゆっくりでも生きやすくしていくには、まず気づくことが大切になります。

 

そのため、SOSのサインについて考えたいと思います。

 

これは、「うつ病」の発見にも同様のことがいえると思います。

 

また、「セルフ・ネグレクト」は、「どんどんどうでもよくなってしまう」という傾向があります。

 

ゴミは溜まれば溜まるほど、出すことが大変になります。

生活リズムや食生活も乱れた日々が続けばそれだけダメージになる上に、

整えようとする際にはパワーを要します。

そもそも「小出し」でさえ、それをするエネルギーがないのに、

もっとパワーを要することはできないために悪化していってしまうことは想像に難くないですよね。

 

「めんどくさい」

「セルフ・ネグレクト」である場合、

まず、ご本人の心境として最も多く認識できる気持ちは「めんどくさい」であると思います。

実際にカウンセリングの場でも、「めんどくさくて…」と話されることが多いです。

 

「めんどくさい」という気持ちは、ご本人のとても正直な気持ちであると思います。

 

それ自体は何も悪くないのに、

「“めんどくさい”という気持ちは、なんとかできることであり、やらないのは怠けだ」

という根拠のない先入観を持っている場合が多いですよね。

 

この「めんどくさいからやらないのは本人が悪い」という、どこから発生したのかわからない間違った教えによって、

ご本人は「自分がダメだから」「やればできるんだけど」と自責的になってしまい、

ご自身の状態を軽く考えてしまいます。

さらに、周囲も「めんどくさがりだ」で終わらせてしまうという事態を、非常に多く見ます。

 

これは、間違っています。

 

「めんどくさい」のは、うつ病のサインでもあり、

「セルフ・ネグレクト」の典型的な表れ方であると思います。

 

そして、「めんどくさい」という気持ちは、

正確にいうなら「ちょっとがんばればすぐ済むことでさえ、やるエネルギーがない」ということだろうと考えています。

 

そのため、「めんどくさい」と思うことが増えたら、

それは「心身のSOS」だと受け止めてほしいなと思います。

 

「入浴」や「着替え」が億劫

「めんどくさい」に通じますが、

「入浴」や「着替え」などのご自分を清潔に気持ちよく保つことが億劫になっていたら、危機的な「SOS」です。

 

「ゴミ出し」や「掃除」などをしないことが増えたということも同様にSOSのサインです。

 

人それぞれ、清潔さに関しての価値観は異なります。けれど、「不潔でいたい」と希望する人はいません。

 

しかし「自分のことだから」と捉えると、「どうでもいい」と

優先順位が下がってしまう状態が「セルフ・ネグレクト」なのだと思います。

 

他者が関わることや仕事などの義務が生じることはなんとかできていても、

自分の身の回りのことになると雑になり始めることが、

「うつ」や「セルフ・ネグレクト」の始まりだと思います。

 

自己否定に繋がる

「生活上当たり前の入浴や着替えがままならない」という状態は、

自己嫌悪感や自分への情けなさなどの自己否定感を抱いてしまいます。

そのため、人に相談することも躊躇してしまいますし、

どんどん「自分はダメだ」と思い詰めてしまう傾向があります。

けれど、誰だって「やってしまったほうが楽」なはずなのです。

「やったほうが気持ちが良いし、楽になる」ことでさえ、

できなくなってしまうほど、

心身が限界である状態なのだと思います

 

対処法

厳密な「セルフ・ネグレクト」の範囲から離れますが、

広い意味で「うつ状態」「無気力」を考えた場合、

「悪化」「回復過程」の2通りがあると思います。

 

「悪化」とは、「高齢者のゴミ屋敷問題」に象徴されるような、

そのときの心身の状態が弱ってしまって、外からのサポートがなければ命の危険もあるという状態です。

 

一方で、例えば機能不全家庭から脱出して一人暮らしを始めた矢先に

うつ病など何らかの病が発症して寝たきりに近い状態になってしまうというケースも珍しくありません。

 

この場合は、それまでの蓄積された疲労が出たためであり、

回復に必要な過程といえるかと思います。

 

いずれの場合も、心身両面のケア、そして可能であれば住環境を保つ外部のサポートが必要になると思います。

 

「セルフ・ネグレクト」の場合は、

人の手を借りて、適切に休むことがまず必要だと思います。

 

孤立を防ぐ

「セルフ・ネグレクト」の防止および対処法における一番のポイントは

「孤立を防ぐ」ことであると思います。

 

高齢者はもちろんですが、昨今のコロナの情勢も重なって、

年代問わず「孤立」する状況になってしまう可能性が高まっていると思います。

 

また、「働き世代」とされる中年層は、「自活できて当然」という見方を自他共にもっていることが多く、

ご自身の不調を言い出しにくく、助けを求められないことが多く、実はとても心配な世代であります。

 

ご自身では気づきにくいですから、「気がついたら身の回りのことができなくなっていた」としても

「どうでもいいか」と済ませてしまいがちです。

 

元気がなくなれば、できなくなってしまうことはおかしいことではありません。

 

頼れる人に相談する、

あるいは病院へ通院しているのであれば、そこからヘルパーさんの派遣などの福祉サービスと繋がることが可能である場合があります。

 

「セルフ・ネグレクト」は、一人で解決することは難しいと思います。

ぜひ、通院も含めて誰かに相談してみてほしいと思います。

ご自身の現状を遠慮せず話せる場所をもつことが第一に必要だと感じます。

 

身体の声をきく

途中で触れた「今までの過酷な環境下でのストレスの表出で、回復の過程」であれば、

自分を甘やかすことに専念できるといいと思います。

 

「セルフ・ネグレクト」であっても「それまでの反動による疲労の表出」であっても、

心身のエネルギーが著しく低下した状態です。

 

そのため、「身体はどうしたいのか」という視点で関心を向けてあげることが大切です。

 

「寝たい」「休みたい」「疲れた」など、何か訴えてくれていると思います。

できれば、その身体の声の言うとおりに過ごすことが適切な対処であることが多いです。

 

罪悪感を持たず、自分を責めず、労わりの気持ちをご自身に向けてあげて欲しいと思います。

 

「気力がない」「動けない」ことも、自分からのメッセージです。

その声を「めんどくさいから」「どうでもいいから」等と、ネガティブに捉えてスルーしてしまうのではなく、

「今は仕方がないよね。それだけ疲れたんだから」

「何もやる気がしないのか、そうかそうか」と、

どうか優しい対話をご自身に向けてほしいと思います。

 

そうしていくうちに、少しずつ気力が戻ってこれると思います。

 

温かいものを食べよう

「自分に関心がない」ときは、食べ物もろくに食べていなかったり、

テキトーな物で済ませがちになります。

 

悩むことも誰かに相談するときにも、休むことですら、エネルギーがいります。

 

なのでまず、何か食べましょう

 

お勧めは「おにぎり」などの炭水化物です。

「糖質オフ」なんて言っている場合ではありません。

 

おにぎりなどの白米は日本人の体質に合っていることが多く、

すぐにエネルギーになってくれます。

もちろん、おにぎりに限らず、

「食べたい物」が浮かんだらそれが一番です。

 

さらにできれば、「温かいもの」があるといいです。

おにぎりなどを温めてもいいですし、お味噌汁などがあるとより身体が元気になれるかと思います。

 

「身体の温かさ」は心も温かくする作用があります。

 

身体が欲するものをとっていきましょう。

 

そして、食事のときに、少し意識してゆっくり味わうようにしてみてください。

そういった丁寧さが、ご自身への関心や愛情を呼び起こしてくれることがあります。

 

病院を受診

冒頭の「ゴミ屋敷」の問題は、強迫性障害やうつ病など、

なんらかの精神疾患の可能性もあります。

先ほどの「孤立を防ぐ」でも触れましたが、

1人だけで抱えずに、助けを求めることは重要だと思います。

その中の1つとして「病院を受診する」という選択肢は念頭に入れておいてほしいなと思います。

 

福祉制度

精神疾患で通院している場合に受けることができるサービスとして以下の3つがあります。

障害者手帳(初診から半年後以降)

自立支援(医師が「指定医」であること)

障害年金(初診から1年半後以降。初診時に年金加入が必須)

経済的な負担を減らすことができるサービスが利用できるかもしれません。

いずれも通院が必要で、医師の判断が伴いますので、

ご興味がある方は主治医にご相談してみてください

 

先ほど述べたように、医療機関の受診は、病気の治療だけでなく、

福祉サービスに繋がる入り口にもなり得ます

ただ、もちろん、区役所の福祉課に相談してみることも有効な手段の1つです。

 

いずれにしても、行政サービスは、受けられるサービスがあっても、こちらから動かないと提供されないので、

人を頼りながら必要なサービスは受けられるように進んでいければと思います。

 

 

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すっかり秋になり、肌寒く感じることが増えましたね。

天気もスッキリせず、梅雨時のように心身の不調を抱えやすいと思います。

 

こういうときこそ、ご自身を甘やかして疲れをためないようにしたいですね。

今日は、いつも以上に食べたい物をゆっくり味わおうと思います♪

 

今日も最後までお読みくださってありがとうございましたm(__)m

 

またのお越しをお待ちしております!

 

 

 

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