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心理士の裏話 心理雑談

カウンセリングの保険適応の是非 ~寝子の見解~

 

カウンセリングや心理療法の保険適応について、

たまに話題になりますよね。

今はごく限られた療法は保険適応になっていますが、

基本的に心理療法およびカウンセリングは保険が効かない自由診療です。

 

患者さんや一般の人たちからは当然ながら「保険適応にして」という意向をよくお伺いします。

その方が安いですから、負担が減りますので当然です。

 

心理士の中でも保険適応を求めている人は多いですし、実際にそのように動いているのだろうと思います。

 

けれど、私の見解は、カウンセリングの保険適応に反対です。

 

多額の料金を取ろうというわけでは決してなく、

「1回50分5000円」が妥当であり、保険の適応は今のままでは止めて欲しいという立場です。

 

「健康保険」というもの

まず、「国民皆保険制度」は日本の素晴らしい制度だと本当に思います。

その上で、1つ触れておきたいポイントは、

現状では「医師が実施」あるは「医師の指示」があれば「保険適応」

医師がいなければ「保険外」になっていることがほとんどだという点です。

 

精神療法、心理療法、カウンセリングも医師が行えば保険が適応されるけれど、

心理士であればダメ、という現状があります。

 

たとえば、漢方の処方を薬剤師が専門として行っている「漢方薬局」などがありますが、

医師がいなければ自由診療になっていますよね。

 

…これもどうなんだろうと不公平感を感じなくもないですが、

「保険適応」ということは差額を税金から支払うということです。

 

「税金で支払おう」と判断してもらえる立場が

「医師」なのかもしれませんね。

 

 

心理業務では、「心理検査」は医療機関で「医師の指示の下」に公認心理師が行えば「保険適応」ですが、

心理士だけで運営している相談室などであれば全く同じ検査をしても「自由診療」となります。

これは、ケタが1桁違うのが相場です。

例えばWAISを医療機関で受けたら保険適応で1500円前後

私設相談室で受けたら15000円前後が相場となっています。

 

心理士の立場として、保険算定が安すぎると思っています。

私設相談室の相場が妥当であると思います。

けれども、1つの検査に15000円以上も出さなくてはいけないのはかなりの負担ですし、

それで奇跡のような結果が得られるわけでもないのが現実で、

「施行のスキルと結果」が伴わない難しい問題だといつも思います…。

 

 

ただ、このような現状だということは、心理療法やカウンセリング全般に保険が効いたとしても、

それは医療に限定されるのかもしれないなと思います。

 

 

医師ありき!!!!

 

 

そうなれば、カウンセリングが本格的に保険適応された場合、

医療機関のカウンセリングはパンクしてしまうし、

私設相談室は経営が成り立たないことが増えるなど、

受け入れ場所がなくなってしまうかもしれないなと考えたりします。

 

カウンセリングの「構造」

私が「カウンセリングの保険適応に反対」である一番の理由は、

カウンセリングの「構造」のためです。

 

カウンセリングは、医師の診察のように「1人あたりの時間数は自由」ではありません。

「1回50分~60分」を基本として、「時間」で契約しています。

ですので、1日あたりに1人の心理士が行える数というのは、8時間勤務で最大8人が限度です。

しかし、仕事はカウンセリングだけではありませんし、

毎日8人もケースを入れていたら心理士がつぶれてしまうので、実際は多くても6人程度でしょう。

 

加えて、一度開始されたら、ご本人が希望する限りは基本的に継続し続けます。

ということは、極端にいえば

「永遠にその枠が空かない」→「新規ケースを入れられない」

という事態が起きるのです。

 

このようなとき、1回1時間の値段が1000円ちょっとだとしたらどうでしょうか?

 

「よくなったけど辞めるのは不安だからとりあえず続けよう」

「悩みを解決するつもりはないけれど、優しく話を聞いてくれるから、値段も高くないし、気晴らしの1つにしよう」

 

と思うことが増えてもなにも不思議ではないと思います。

 

そうしますと、先ほど述べたように

 

枠が空かない

 

という事態になります。

加えて、もしかしたら、カウンセリングの内容そのものが「治療の場」ではなく

「気晴らし」「趣味の1つ」となってしまうこともあるのではないかと危惧します。

 

 

今、精神疾患で本当に苦しんでいる方々には、安価で適切な心理療法が届くべきだと思います。

ただ、一方で、世の中にはさまざまな人がいて、

苦しんでいたら皆がその苦しみに直接効く療法を望むわけでもできるわけでもないのですよね。

 

できないこともとても多い。

そのようなとき、こちらも工夫しながらゆっくりと歩いていくことが必要になります。

そのようなケースにももちろんカウンセリングは必要です。

特定の心理療法を行えないなら受けられないなんてことは

困っている人たちへの対処として本末転倒だと思います。

 

 

一方で「気晴らしに」「そんなに必要ではないけど」というケースが増えてしまうと、

「症状に苦しみ、それを何とかしたい人たち」に、枠が空かないのでそれこそ「適切な心理療法が届かない」という事態になりかねません。

「安さ」というものはある意味のリスクになると考えています。

 

保険が効く心理療法

例えば「持続的エクスポオージャー(PE)」などのPTSDへの認知行動療法や

TMSという電気刺激療法も保険適応になったと聞いています。

 

余談ですが、「保険適応」などの国の財政が関わる問題は、

政治力も大きく影響するのだろうと思います。

心理業界の「認知行動療法学派」のパワーはなんだかすごいですね。

 

それよりも何よりも「医師会」は頂点ですものね。

 

いずれにしても、「限定」しないと現実には難しいのだろうなと思います。

 

小西聖子先生

話がそれますが、「PE」と「政治」で

「小西聖子先生」を思い出しました。

小西先生は被害者支援のパイオニアといわれ、

私の一番の憧れの先生です。

芸能人の追っかけみたいなテンションで小西先生の講演や研修などを受けていた時期がありました笑。

大学院生だったときに学会終わりに初めて個人的にほんの少しだけお話しできたときは、

帰り道に感激で涙したほどです笑

そんな小西先生が「DVの加害者に“加害者更正プログラム”を受けることを義務化する」という法案を通すために

ご尽力されていたことがあったそうです。

その法案が通る直前で、小西先生は「自ら降ろした」というお話しをされていたことがありました。

理由は

“義務”にすることを条件にしていたのに“努力義務”になってしまったから

義務ではなく、努力義務になってしまうと、

加害者側が裁判のときなどで「プログラム受けたんだから!」と

自分が有利になるために使われてしまう。だから泣く泣く法案を降ろしたんです」と。

「なるほど!!」と、すごく納得しました。

なんでもかんでも通せばいいわけじゃないのだと、

「頭の良い人ってすごい」と馬鹿な私はずいぶん感銘を受けたことを覚えています。

 

 

「保険」ではない対処を

私が思う理想は、

「心理士1人あたりの雇用に対して、その所属機関に税金で補助金を出す」

ことにしてほしいなと思っています。

その最たる例が「公立学校のスクールカウンセラー」です。

 

カウンセリングが保険適応になったとして実際にいくらになるかわかりませんが、

おそらく3割負担で2000円弱程度、生活保護の方などは無料、ということになると想像します。

(生活保護の方は、現状でも1ヶ月の上限がありますがカウンセリング料金に補助が出ます)

 

ここまで述べたように「保険が効いて安いから」と列をなされてしまったら、

かつ、1人1人の心理士に勤務時間フルでケースを入れられてしまったら、

心理士はつぶれ、医療機関はパンクし、私設相談室は「なんでそんなに高いんだ!?」と非難される・・・、

という地獄絵図をイメージしてしまいます・・・。

 

なので、受ける側のモチベーションのためにも「5000円」は担保した上で、

心理士の雇用を増やすことができたらと思っています。

あるいは、支払い金額が「5000円前後」になるくらいに保険点数を高くしてほしい。

 

心理士は稼ぐことが難しい

公立学校のスクールカウンセラーの時給は高く、全額が税金です。

一方で、医療機関の心理士の時給は平均1500円前後です。

 

そして、SCでも医療機関でもどこでも、

基本的に雇用形態は「アルバイト(非正規)」です。

 

その中で、学会や研修会にも出て、日々勉強もしなくてはいけません。

 

ただ、「売り上げ」という視点で医療機関を考えたとき、

1日に100人以上も診察して「稼げる」医師に比べて、

心理士の稼ぎは8ケースやったとしても、たかがしれています。

だとしたら、経営者としてはさほど給料を払いたくないし、

ケースをぎゅうぎゅうに入れられないのに複数の心理士を雇うなんて

「損だ」と判断することがあっても無理もないと思います。

 

でも、私たちの仕事はそういう仕事なのです。

売り上げられない業種なのです。

そしてそれは、医療事務や看護師や福祉職も同じです。

 

結局、まだまだ「心理職」という職業が知られていないということなのだと思います。

 

所属機関が心理士を多く雇用できるように助成金を出す方に税金を遣って欲しい。

あるいは、保険適応するなら保険点数はかなり高くして、

それで心理士を増やして、カウンセリング枠を必要な人に提供できるようにしてほしい。

 

 

 

 

そんな風に私は思っていますが、そうではないお考えやご意見もたくさんあることと思います。

 

心理業務がいまひとつ分かりにくいのは、

成果があいまいというところがあるのだろうと思います。

「何をして、どれくらいの期間、どうなるのか」ということが非常にあいまいなところが、

保険適応や心理士の雇用形態など大きな課題に取り組むときの弊害になるのだろうと思います。

 

私はダラダラとカウンセリングを受けさせることに反対です。回復できるよう支援し、卒業を目指したいです。

でもそれは、ほとんどの心理士やクライエントさんがそう思っているでしょう。

 

ただ現実は、人の心は、マニュアルどおりにいかないし、

エビデンスがあるからといってそれで支えられることばかりではないですし、

今現在の精神医学や心理臨床も発展途中です。

 

あいまいな領域が他の職種より大きいために、心理士が声をあげるということも、

なかなかはっきり言えない事も多く、難しいなぁと思います。

 

 

私が現役でいるまでには、心理士の雇用の不安定さも保険適応の是非も大きく変わらないだろうと思っています。

 

 

でも、もっと先の未来は、心理士もクライエントさんも今よりもきっと働きやすく受けやすく、

有効な治療法ももっと出て、より良くなっていくのだろうと思います。

 

これまでの心理職の拡大を見ていると未来は明るいことは間違いないと思っています。

 

 

 

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心理業界はまだまだ課題がたくさんあると思います。

それでも私の世代は、先人の偉大な先生方が「臨床心理士」という資格を作ってくださり、

発展させてくださって、雇用条件や給料は不安定でも、働く場が既にあった世代です。

そのことに本当に感謝しています。

 

 

 

ということで、丸くおさめたいと思います笑

 

 

今日も最後までお付き合いくださってありがとうございましたm(__)m

 

またブログでお会いできることを楽しみにしています!

 

 

 

 

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